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神戸地方裁判所 平成5年(ワ)399号の3 判決 2000年2月16日

兵庫県高砂市<以下省略>

原告

右訴訟代理人弁護士

山﨑省吾

東京都千代田区<以下省略>

被告

新日本証券株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

宮﨑乾朗

田中英行

主文

一  被告は、原告に対し、金一四三三万九八五七円及びこれに対する平成五年三月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決の一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金二八七一万五九六八円及びこれに対する平成五年三月二五日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が、被告の外務員の違法な勧誘に応じてワラント取引を行ったことにより損害を被ったと主張して、被告に対し、民法七〇九条、七一五条に基づき、右取引により被った損害の賠償を求めた事案である。

一  前提事実(争いがないか、各項末尾掲記の証拠により認められる。)

1  (当事者)

(一) 原告は、昭和一〇年○月○日に生まれ、昭和三七年にa医科大学(現在のa1大学医学部)を卒業し、昭和三八年に医師国家試験に合格し、b大学医局等に勤務した後、昭和五四年に兵庫県高砂市内においてc整形外科医院(以下、単に「医院」という。)を開業し、現在に至るまで同医院を営んで整形外科医をしている。医院の医師は原告のみであるが、職員数は約二〇名、病床数は一九床、一日に診察する患者の数は一五〇名から三〇〇名程度、年間の診療報酬額は多いときで三億円程度である(甲F一、原告本人)。

(二) 被告は、証券業を営む株式会社である。

B(以下「B」という。)は、昭和五三年四月に被告に入社し、昭和六三年八月から姫路支店に配属され、平成元年一二月ころから平成三年五月ころまでの間、原告との取引を担当していた。Bは、その後、平成五年七月三一日に被告を退職した(乙F一五、証人B)。

2  (ワラント取引)

原告は、Bの勧誘により、被告(姫路支店)との間において、別紙「ワラント取引状況」記載のとおりの各ワラント(以下、順に「日商岩井ワラント①、日商岩井ワラント②、マツヤデンキワラント、日本通運ワラント、トステムワラント」といい、このうちマツヤデンキワラントを除くものを総称して「本件ワラント」という。)の購入並びにこのうち日商岩井ワラント①、②及びマツヤデンキワラントの売却の取引を行った。日本通運ワラント及びトステムワラントについては、売却しないまま権利行使期間が経過した。

右各ワラントの購入時に原告が支払った代金の合計額から、日商岩井ワラント①、②及びマツヤデンキワラントの売却時に原告が受領した代金の合計額を差し引くと、二八六七万九七一五円となる(甲F一、一二、乙F一の13、15~17、一〇~一八、証人B、原告本人)。

3  (ワラント取引の仕組み)

ワラントとは、一定の権利行使期間内に、一定の権利行使価格で、一定の数量の新株を引き受けることができる権利を表章する証券であって、新株引受権付社債の発行後にこれが新株引受権証券と社債券に分離されたものの前者の部分を指す。

ワラントの価格は、理論上は株価に連動するが、実際の流通価格は思惑によっても左右される。実勢株価が権利行使価格を下回っている場合、ワラントの理論上の価格はマイナスとなるが、実際には、将来の株価上昇への期待等を反映して、理論上の価格より高額で売買されることも少なくない。

ワラント取引で利益を得るためには、ワラント自体を権利行使期間内に購入価格を超える額で売却するか、又は実勢株価が権利行使価格を超える水準にあるときに新株引受権を行使し、株式の買付代金を払い込んで当該ワラントの発行会社の新株を取得した上、これを売却することが必要となる。

ワラントの価格の変動率は、株式に比べて大きくなる傾向があり、ワラント取引では、実勢株価が権利行使価格を上回れば、株式を売買するよりも少額の資金で株式を売買した場合と同等以上の利益を得ることが可能である反面、権利行使期間内に実勢株価が権利行使価格を上回らないときは、新株引受権を行使して利益を得る機会を失うことになる。

ワラントは、権利行使期間が経過したときにはその価値を失うという性質を持つ証券であり、ワラント取引では、投資金額の全額を失うことがある反面、投資金額を超える額の損失が生じることはない(甲四一、乙二の1、2、弁論の全趣旨)。

二  争点

1  不法行為の成否

(原告の主張)

(一) 適合性原則違反

原告は、整形外科医であって、証券取引については「株は上がったり下がったりすることが分かる」程度の初心者であり、昭和五四年ころ以降証券取引の経験はあったものの、父祖の土地の売却代金と老後の生活資金を投入して、主として安全な上場企業の現物株の取引を行っていたもので、銘柄の選択についてもほぼ専ら証券会社の担当者の推奨によっており、ワラント取引のような仕組みが超難解で、投資金全額を失うおそれがある極めてハイリスクな投資を行う意向、それにふさわしい投資経験、資力のいずれも有していなかった。

(二) 説明義務違反

原告は、平成二年六月一三日に、Bから日商岩井ワラント①の購入を勧められた際、「足の速い商品がある」「株式より値上がりが先行する」と言われただけで、「ワラント」という言葉すら知らされず、商品についての説明など全くないか、あったとしても理解できなかった。原告は、理解できないのでこれを断ったところ、Bは、同日、会社に戻ってから電話をかけてきて執拗に勧誘するので、仕方なく購入を許可したが、ワラントが新株引受権証券であることや、その権利行使期間、権利行使価格、権利行使に必要な株式取得代金額の決定方法等については一切説明がなかった。また、右ワラントが外貨建てのものであることや、その取引は店頭相対取引という形態をとること、価格情報の入手方法、「ポイント」の意義、価格の計算方法等についても全く説明がなかった。その後日本通運ワラントを購入するまでにも、原告はこれらの事項について全く説明を受けていない。この間、取引説明書は全く交付を受けていない。確認書や約諾書には形式的に署名押印を求められたにすぎない。

原告は、トステムワラントを購入する際には、Bから、権利行使期間の制限があることと、それを経過すると無価値となることの説明を受けたが、「権利行使期間が相当長ければ、可能性として上昇する機会がかなり高いから、今までの損を一挙に回復することができる」「ワラントでないと損は取り返せない」「損を取り戻すにはこれしか方法がない」などと言われて、やむなくこれに買い換えたもので、原告が積極的かつ自発的に右の取引を選択したものではない。

(三) 断定的判断の提供

Bは、日商岩井ワラント①の購入を勧められたが、ワラントがどのような商品か理解できずにいったん断った原告に対し、同日さらに電話をかけて、「絶対大丈夫、損をすることはない」などと言って執拗に勧誘したので、原告は、納得しないまま、「君がそこまで言うんだったら買ってみなさい」と言って右ワラントを購入するに至ったものであって、原告が右ワラント取引に応じたのは、Bから断定的判断の提供がされたためである。

(四) 誠実公正義務違反

証券会社は、一般投資家からの委託を受けて有価証券市場において株式の売買を行うことを主たる業務とするから、商法上の問屋の地位を有するものであり、顧客に対しては、誠実な管理者の注意をもって事務を処理すべき義務を負う(商法五五二条二項、民法六四四条)。

日商岩井ワラント②のナンピン買いやトステムワラントの買換えは、ワラント取引について正確な知識を有しないBが、よりリスクの高い不利益な取引に積極的に勧誘したもので、問屋としての誠実公正義務に反するというべきである。

(被告の主張)

(一) 適合性原則違反について

原告は、相当規模の医院を経営する資産家で、十分な資力を有していた。原告のワラント取引は、当初の投資の乗換えによるものが大部分を占めており、父祖の土地の売却代金をワラント取引で費消した事実はない。

原告は、被告との取引以前に三社もの証券会社で取引を継続し、信用取引まで経験しており、被告との取引に際しても、日経新聞を新たに購読したり、他社から証券取引に関する情報を入手したり、ロータリークラブで情報交換をしたりしており、ワラント取引を行うに十分な投資知識・経験を有していた。

原告は、ワラント取引以前に多数の店頭取引を繰り返し、損切りにも全く抵抗感を持っておらず、短期間の売買を前提としたキャピタルゲイン獲得を目的としていたことが明白で、ワラント取引はその投資選好に合致している。

(二) 説明義務違反について

証券会社が顧客に対してワラントについての説明義務を負うとしても、株式と異なるワラント独自の危険性である点、すなわち①ワラント価格は基本的に株価に連動し、かつ株価の数倍の値動きをすることと、②ワラントは権利行使期間経過後は無価値になることを説明すれば足りるというべきである。

Bは、原告から「今後、日経平均株価が上昇する過程の中で、最も投資効率がよく、儲けられるものは何か」と尋ねられたため、ワラント取引を提案したものであるが、平成二年六月一三日に最初のワラント取引である日商岩井ワラント①の購入を勧めた際には、原告に対し、医院を訪問して、ワラント取引説明書を交付した上、約一時間にわたり面談して、ワラントが新株引受権であることや、権利行使価格、権利行使期間、為替の影響、約定代金の算出方法等のワラント取引の仕組みとリスクについて説明し、ワラントの値動きの仕組みについては不動産取引における手付金に例え、権利行使期間についてはバスや電車の定期券の有効期間に例えて、的確で誰でも容易に理解できる内容の説明をしており、説明義務を尽くしている。

右ワラントを購入した時点では原告の理解が不十分であったとしても、平成三年三月二二日にトステムワラントを購入した時点では、原告はBから権利行使期間を経過すると権利が消滅するとの説明を受け、ワラントがそのようなリスクを持つ商品であることを承知の上で、権利行使期間が長い右ワラントに乗り換えたもので、少なくとも右ワラントの権利消滅による損失は被告の不法行為により生じたものとはいえない。

(三) 断定的判断の提供について

Bは、原告に対して日商岩井ワラント①の購入を勧めた際、ワラント取引がハイリスク・ハイリターンであることも説明しており、「絶対大丈夫、損をすることはない」などと言ったことはない。原告は、Bの約一時間にわたる説明により、ワラント取引の仕組みやリスクは十分理解した上で、右ワラントの値動きに関する自己の相場観に基づきいったん注文を見合わせたが、翌日、Bから約三〇分にわたって値動きの予想に関する説明を受け、その意見に賛成して、これを注文したものであって、Bが原告に対して断定的判断の提供をした事実はない。

2  損害の額

(原告の主張)

本件ワラントの購入時に原告が支払った代金の合計額から、このうち日商岩井ワラント①、②の売却時に原告が受領した代金の合計額を差し引くと、二八七一万五九六八円の損失となる。原告は、被告の不法行為によって右同額の損害を被った。

(被告の主張)

原告は、本件ワラントのほかに、マツヤデンキワラントの取引もしており、これにより三万六二五三円の利益を得ているから、右の額は損害額から差し引かれるべきである。

3  過失相殺の当否

(被告の主張)

前記1における被告の主張のとおりの事実経緯に照らすと、原告には過失相殺の原因たるべき事実が無数に存在する。

(原告の主張)

Bの原告に対する勧誘行為は、断定的判断の提供を伴っている上、損失発生後にさらにリスクの高い不利益な取引に積極的に勧誘するなど違法性が顕著であり、被告の不法行為責任は重大であるし、原告に専門業者を信頼した点において迂闊さがあるとしても、それは業者側の行為によりもたらされたものであるから、過失相殺をすべきではない。

第三争点に対する判断

一  前記前提事実並びに証拠(甲F一、三~五、七~一〇、一二、乙二の1、2、F一の1~19、二、三の1、2、四、一〇~一八、証人B、原告本人、調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実を認めることができる。Bの供述(証人尋問における供述と乙F一五における陳述を合わせていう。以下同じ)及び原告の供述(本人尋問における供述と甲F一における陳述を合わせていう。以下同じ)のうち、以下の認定に反する部分は採用できない。

1  原告は、昭和五四年に医院を開業する少し前のころから、大和証券との間において現物株の売買の取引をしていたほか、和光証券及び日興證券との間においても株式売買の取引を行っていたことがあった。大和証券との取引では、信用取引をして損失を出したことがあった。日興證券とは、昭和六一年一二月ころから取引を開始し、転換社債の取引をしたこともあった。

原告は、昭和六二年一一月一〇日に被告(姫路支店)との取引を開始し、同日、日本電信電話株を購入したのを始めとして、現物株の売買の取引を行っていたほか、「フォーミュラシステムオープン」という投資信託商品の取引もしたことがあった。原告が行う証券取引は、平成元年ころには被告との取引が中心となって、前記各社との取引は稀になっており、本件ワラント取引をした時期には前記各社とは取引をしていなかった。

被告姫路支店の外務員であったBは、平成元年一二月ころから、同支店における原告の取引を担当するようになった。原告は、地元の業績のよい企業の関係者がフェニックス電機という会社を起こし、その株式が店頭公開されるという話を知合いから聞いて、Bに対し、これを購入したいと伝え、平成元年一二月二二日に、同社の株式を一〇〇〇株購入した。原告が、被告との間において店頭株の取引をしたのはこのときが最初であった。以後、Bは、原告に対し、店頭株を中心に推奨し、原告は専らBの推奨するとおりの取引をしていた。原告は、当時、株を購入する資金にはそれまで保有していた株を売却した代金を充てるのが通常で、新たな投資資金を投入することはほとんどなかった。

Bは、原告と週一回程度は医院を訪問して面談していたほか、電話のやりとりもしばしばあった。

原告は、株式取引をするようになってからは、それまで購読していた朝日新聞に加えて、日経新聞も購読していた。

2  Bは、平成二年六月一三日の昼休み中に医院を訪問し、原告に対し、ワラント取引につき約一時間にわたり説明して、日商岩井ワラント①を購入することを勧めた。原告は、Bの説明から、購入を勧められている商品が株式とは異なり、株価より早く値上がりし、利益も株式に比べて早く生じるという理解をしたが、それがどういう商品か明確に理解することができず、午後の診察時間が始まる時間が近づいたころに、どういう商品かよく理解できないので要らないという趣旨のことを述べて、その取引を断った。

(なお、Bは、右の訪問をした際に、原告に対し、ワラント取引では値上がりすれば小さな資本で大きな利益が上げられる反面、値下がりすれば投資した全額を失うことがあることを不動産取引における手付金に例えて説明し、ワラントには権利行使期間の定めがあることをバスや電車の定期券に例えて説明したほか、ワラントが新株引受権で、権利行使価格として定められた金額を払い込むことによって株式を引き受けることができることや、外貨建てワラントでは為替相場の影響を受けること、約定代金の出し方、投資判断として見てほしいのは権利行使価格と株価であることなどを説明したと供述する。しかし、同人は、当時の株式相場の動向、原告の他の証券会社との取引状況、原告の店頭株取引開始の経緯等について他の証拠により認定できる事実と相反する供述をしている上、ワラント取引に関する一般的知識についても誤解や混同に基づくと思われる供述をしているところがあることに照らすと、同人が原告とのワラント取引を担当してから右供述をするまでに約八年が経過し、被告を退職してからも約五年が経過したことにより、同人の原告とのワラント取引を担当した当時の記憶は相当薄れて、あいまいになっていると窺われる。そうすると、同人が原告に対して行った説明の内容についてのみ正確かつ詳細に記憶しているとは考え難く、原告に対しワラント取引を勧めるに当たり行った説明の内容に関する同人の供述はそのまま採用することはできない。その他本件全証拠に照らしても、原告が、最初に日商岩井ワラント①の購入を勧められた段階で、Bから、ワラントの価格の変動率は株式に比べて大きくなる傾向があり、ワラント取引では株式を売買するよりも少額の資金で株式を売買した場合と同等以上の利益を得ることが可能である反面、ワラントには権利行使期間の制限があって、それを経過すると無価値となり、価格が上昇せずに権利行使も売却もできないまま権利行使期間を経過すると投資金額の全額を失うというリスクがあることを理解するのに十分な説明を受けていたと認めることはできない。)

3  Bは、右同日の夕方に支店に戻った後、医院に電話をかけ、原告に対し、さらに日商岩井ワラント①の購入を勧めた。そのとき、原告は、外来患者の診察時間中で、ゆっくり話ができる状況ではなかったが、Bから、儲かる可能性が高いという趣旨の説明を受け、Bに対し、そこまで言うのであれば購入してみるという趣旨のことを述べて、右ワラントの購入に承諾し、短時間のうちに電話を切った。右のとおりの経緯により、原告は、翌日の平成二年六月一四日付けで、代金二〇八一万七〇〇〇円(単価一八ポイント)で日商岩井ワラント①を購入した。右購入代金には、当時利益の出ていた店頭銘柄である三益半導体株を売却して得た代金四五六二万八三四四円の一部が充てられた。

(なお、Bが、右の電話での勧誘の際に、原告に対し、ワラント取引につき具体的にどのような説明を加えたのかについては証拠上明らかとはいえないが、その少し前に、面談で相当の時間をかけて説明を受けた際には、どういう商品かよく理解できないので要らないと述べていた原告が、右の短時間の電話での説明により、ワラントの商品性につき十分に理解できるようになったために、ワラント取引をすることにしたとは考え難く、右認定のとおりの一連の経緯に照らすと、原告の日商岩井ワラント①購入に直接結びついた右の電話での勧誘の際にBがした説明は、それにより利益が得られる可能性を相当強調したものであったと推認される。)

4  Bは、右ワラントの受渡日である平成二年六月二一日ころに医院を訪問して、原告に対し、右ワラントの預り証(乙F一六)を交付した。右預り証には、商品名として「海外ワラント」と、数量として「七五〇千通貨」と、摘要として「USドル、一五〇WR」と記載されているほか、「権利行使最終日5/2/24」との記載があったが、権利行使価格については記載がなかった。

Bは、原告が右ワラントの購入を承諾した少し後のころに、原告に対し、被告から受領した外国新株引受権証券取引説明書の内容を確認し、自己の判断と責任においてその取引を行う旨の記載のある確認書(乙F三の1)及び外国証券取引口座設定約諾書(乙F二)に署名押印を求め、原告はこれらに自署して押印した。原告は、右の署名押印をするときまでに、Bから外国新株引受権証券(外貨建ワラント)取引説明書(乙二の2)を受領した。右取引説明書に記載されている内容は、原告にとって理解が困難なものではないが、原告はこれにほとんど目を通さなかった。

(なお、原告は、右取引説明書はずっと後になって数度にわたり送付されてきただけであるかのような供述をするが、原告本人が自署押印したことを自認する右確認書には、本文として数行の記載しかない中に、被告から外国新株引受権証券取引説明書を受領したことを前提とする文言が明確に記載されていることによれば、原告は右確認書に自署押印するまでに、右取引説明書を受領したと推認するのが相当であって、原告の右供述は採用できない。一方、Bは、原告に対し、平成二年六月一三日に医院を訪問して日商岩井ワラント①の購入を勧誘した際に右取引説明書を交付し、さらに原告が電話で右ワラントの購入を承諾した当日又は翌日にも訪問して再び取引説明書を交付し、取引説明書を再交付した際に、原告に右の確認書及び約諾書に署名押印してもらったと供述するが、前記認定のとおり原告は同月一三日にまず口頭で勧誘を受けたときにはワラント取引を断っており、最終的に日商岩井ワラント①の購入を承諾したときには電話であったことに照らすと、Bが原告に対して右取引説明書を交付したのは、日商岩井ワラント①購入の約定よりも後であったと推認するのが相当であって、これに反するBの供述は採用できない。)

5  日商岩井ワラント①の購入当時、日商岩井の株価は八八〇円前後で推移していたのに対し、日商岩井ワラント①は権利行使価格が八七七円六〇銭で実勢株価とほぼ同水準であった。右ワラントの単価は、発行当初は二三ポイントであったのが、右の当時には一八ポイントまで値下がりしていた。

その後、日商岩井の株価は下落していき、平成二年八月後半ころには七〇〇円を切るようになり、右ワラントの単価も一一ポイントまで下がった。Bは、相場は大底を付けており、今後株価は上昇に転じるだろうとの予測の下に、原告に対し、日商岩井ワラント①が値下がりしていることを説明して、これと同時発行のワラントを買い足して買値の平均値を下げるいわゆるナンピン買いをすることを勧めた。

原告は、これを承諾して、平成二年八月二八日、代金七八八万七〇〇〇円(単価一一ポイント)で日商岩井ワラント②を購入した。その代金には、原告が当時保有していた店頭銘柄の高瀬染工場株を損切りして売却した代金が充てられた。

Bは、平成二年九月ころに、原告に対し、右ワラントの預り証(乙F一七)を交付した。右預り証にも、商品名として「海外ワラント」と、数量として「五〇〇千通貨」と、摘要として「USドル、一〇〇WR」と記載されているほか、「権利行使最終日5/2/24」との記載があったが、権利行使価格については記載がなかった。

6  原告は、平成二年九月四日、Bの勧誘により、新規発行の国内ワラントであるマツヤデンキワラントを代金三六万六〇〇〇円(単価一二・二ポイント)で購入し、同月一八日にこれを代金四〇万二二五三円(単価一三・七五ポイント)で売却して、差し引き三万六二五三円の利益を得た。

原告は、右のころに、被告から受領した国内新株引受権証券取引説明書の内容を確認し、自己の判断と責任においてその取引を行う旨の記載のある確認書(乙F三の2)に自署押印して被告に差し入れた。原告は、右の署名押印をするときまでに、Bから国内新株引受権証券(国内ワラント)取引説明書(乙二の1)を受領した。

7  原告は、平成二年九月一九日、マツヤデンキワラントの売却代金に若干の手持資金を加えて、代金六五万九三〇〇円(単価九・五ポイント)で日本通運ワラントを購入した。

8  日商岩井の株価はその後も回復せず、平成三年に入ると六〇〇円を切る状況が続いた。日商岩井ワラント①、②の権利行使期間は平成五年二月二四日までであったが、右ワラントの価格も下落を続け、平成三年一月中ころから同年二月ころにかけては、買いの気配値が五ポイントを切る状況が続いた。

Bは、平成三年三月初めころ、原告に対し、右ワラントの権利行使期間が経過するまでに株価が回復することは困難と思われること、ワラントは権利行使期間が残り少なくなると売却が困難になって、その価格は大幅に下落すること、現時点で右ワラントを売却すると約二〇〇〇万円の損失が出るが、売却しないまま権利行使期間が経過すると無価値になってしまうことなどを説明して、日商岩井ワラント①、②の売却を提案するとともに、右ワラントの損を取り戻すには、長期的に保有でき、株価上昇時に大きな値上がりが見込めるものでなければならないという趣旨の説明をして、権利行使期間が平成九年八月五日までと長期であったトステム(当時トーヨーサッシ)ワラントの購入を勧めた。原告は、これに応じて、日商岩井ワラント①を代金五一一万八三四九円(単価五ポイント)で、同②を代金三四一万二二三三円(同右)でそれぞれ売却し、その代金の一部を充てて、代金七八八万三二五〇円(単価一一・五ポイント)でトステムワラントを購入した。

原告は、トステムワラントを購入する時点では、ワラントには権利行使期間の制限があり、残存期間が少なくなると価格が大幅に下落していき、欠損を出してでも売却しておかないと無価値となるということを理解したが、Bの説明により、日商岩井ワラント①、②の取引における損失を取り戻すには、Bが勧めるトステムワラントを購入する以外に方法がないと考え、これを購入すれば値上がりにより右損失を取り戻せると期待して、これを購入した。

右ワラントの権利行使価格は、五八六三円であった。右ワラントが平成二年八月一六日に発行されたころは、トステムの株価は四七〇〇円台で、右ワラントの気配値は三〇ポイントを超えていたが、いずれもその後ほぼ一貫して下落傾向が続き、原告が右ワラントを購入した平成三年三月ころには、株価は三四〇〇円台、ワラント気配値は一五ポイント台まで下落しており、その約半年後の同年九月後半には、株価は二七〇〇円台、ワラント気配値は四ポイント台まで下落した。

9  日本通運ワラント及びトステムワラントは、権利行使も売却もされないまま権利行使期間が経過した。

二  争点1(不法行為の成否)について

1  適合性原則違反について

前記第二の一3(ワラント取引の仕組み)の事実によれば、ワラント取引は、資金に余裕のある投資者が、ワラントの価格の変動率は株式に比べて大きくなる傾向があり、ワラント取引では株式を売買するよりも少額の資金で株式を売買した場合と同等以上の利益を得ることが可能である反面、ワラントには権利行使期間の制限があって、それを経過すると無価値となり、価格が上昇せずに権利行使も売却もできないまま権利行使期間を経過すると投資金額の全額を失うリスクがあるなどのワラント取引の仕組みとその利点及び危険性を的確に理解した上で、その投機性の高さを認識しつつ、少額の資金で高収益を期待でき、かつ、損失の額が投資金額に限定されるという利点に着眼して余剰資金を投入する場合には、有効な資金運用手段となり得る性質の取引であるということができる。

そして、前記認定事実によれば、原告は、本件ワラント取引開始当時、相当の規模を有する医院を営む現職の医師で、社会経済活動に伴う一般的な理解力及び判断力の面では通常人と同等又はそれ以上の水準にあったと窺われ、それまでに延べ一〇年以上の期間にわたり株式売買等の証券取引をした経験を有し、信用取引や店頭株の取引も経験しており、継続的に証券取引への投資に充てていた資金は数千万円に上っていたと認められるから、原告は、適切かつ十分な説明を受けることにより、ワラント取引の仕組みとその利点及び危険性を的確に理解した上で、投機性は高いが高収益が期待できる取引を望み、余剰資金の運用手段として選択するのであれば、ワラント取引を行うに適する資力と判断能力を有していたというべきであって、原告がこの種の取引に全く適合しない者であるとはいえない。

したがって、Bが原告を本件ワラント取引に勧誘したこと自体が違法であるということはできない。

2  説明義務違反、断定的判断の提供、誠実公正義務違反等について

(一) 証券外務員の一般投資家に対する取引勧誘における配慮義務について

一般に、証券取引における市場価格は種々の要因が複雑に絡み合って形成されるものであり、その動向は本来的に不確定なもので、確実な予測は困難なのであるから、証券取引に際し、証券会社から投資家に対して提供される情報も、本質的に不確実な要素を含むのであって、投資家は、最終的には自己の責任において当該取引による利益やリスクについて判断し、当該取引を行うか否かを決すべきものであるといわねばならない。

しかし、証券取引に関する情報、知識及び経験を集積し、それに基づき投資家に対して推奨を行うことを業とする証券会社及びその従業員である証券外務員と一般投資家との間には、各種証券取引による利益やリスクに関する情報、知識及びその判断能力において格段の差があり、それゆえ一般投資家は証券外務員を信頼し、その推奨や情報提供に依存して証券取引を行う度合いが大きいのが通常であるから、証券外務員は、その顧客である一般投資家に対して証券取引を勧誘するに当たっては、投資者が当該取引による利益やリスクについて適切かつ十分な情報に基づき的確に理解した上で、その自主的な判断に基づいて当該取引を行うか否かを決定することができるように配慮すべき信義則上の義務(以下、このような義務を指して「説明義務」という。)を負うというべきである。

証券外務員の一般投資家に対するワラント取引勧誘行為が、右説明義務を尽くしたものといえるかどうかは、当該投資者の年齢、職業、保有資産、証券取引に関する知識・経験、投資目的等や、当該取引の具体的内容に照らして、当該投資者が自らの責任と判断において自主的に当該取引を行うか否かを決定するのに適切かつ十分な情報が提供されたかどうかにより判断すべきであるが、ワラント取引は、より周知性の高い証券取引である株式の現物取引等と比較して、その価格の変動率が大きいことと、権利行使期間の制限があることが顕著な相違点であることを考慮すると、一般投資家に対してワラント取引の勧誘をするに当たっては、少なくとも、ワラントの価格の変動率は株式に比べて大きくなる傾向があり、ワラント取引では株式を売買するよりも少額の資金で株式を売買した場合と同等以上の利益を得ることが可能である反面、ワラントには権利行使期間の制限があって、それを経過すると無価値となり、価格が上昇せずに権利行使も売却もできないまま権利行使期間が経過すると投資金額の全額を失うリスクがあることについては、当該投資者が的確に理解するに足りる説明をすることを要するといわなければならない。

(二) 日商岩井ワラント①取引の勧誘について

前述のとおり、原告は、Bから、最初のワラント取引であった日商岩井ワラント①の購入をまず面談で勧められた際には、ワラントの商品性を明確に理解することができず、Bに対し、どういう商品かよく理解できないので要らないと明言しており、その後短時間の電話により、右ワラントの取引により利益が得られる可能性を相当強調した説明を受けて、右ワラントの購入を承諾するに至ったと推認されるのであって、Bが原告に対し、右ワラントの購入を勧誘するに当たり、前記のとおりの最低限説明すべき事項につき、原告が的確に理解するに足りる説明をしたと認めることはできない。

(三) 日商岩井ワラント②取引の勧誘について

前述のとおりのワラント取引の仕組みによれば、ワラント取引は、株価の上昇傾向が続くときには高率の利益が得られやすいものの、株価の下落傾向が続くときには投資額の回収が困難となることが多い性質の取引であるということができる。そして、実勢株価が権利行使価格を下回っているときには、ワラントが表章する新株引受権を行使することにメリットはないから、そのような状況下にあるワラントは、権利行使期間が残り少なくなり、株価上昇期待が少なくなると価格が下落して取引されにくくなり、権利行使期間経過前であっても売却が困難となる傾向が生じるのは必然的であるといえる。

したがって、証券外務員が一般投資家に対し、株式及びワラントの価格が下落傾向にある中で、実勢株価が権利行使価格を下回っているワラントの購入を勧誘する際には、前記のとおりの最低限説明すべき事項に加えて、その時点での当該ワラントの権利行使価格と実勢株価との対比並びにそれまでの当該ワラントの価格及び株価の動向を具体的に説明した上で、当該ワラントの購入後、権利行使期間の満了に余裕のある時期までに株価が相当上昇して、当該ワラントの購入価格と権利行使価格を合算した額を上回るに至らない限り、当該ワラントが表章する新株引受権の行使により利益を得ることはできないし、権利行使期間の満了までに当該ワラントの価格も上昇に転じない場合には、当該ワラント自体を売却して利益を得ることもできないまま投資額の全額が損失となるというリスクがあることについて十分に注意喚起して、投資者が右の点について的確に理解し、当該ワラント取引による利益とリスクにつき自主的に判断した上でその取引を行うか否かを決定することができるよう配慮すべき義務を負うというべきである。

ところが、前記認定事実によれば、Bは、日商岩井ワラント②の購入を勧める際には、原告に対し、右ワラントが短期間に相当値を下げていることを説明し、原告も、その値動きの大きさを実感することにより、ワラントの価格の変動率が株式に比べて大きくなる傾向があることについては理解したと認められるものの、Bは、右ワラントの購入を勧めた際、原告に対し、相場は大底を付けており、株価は上昇に転じるだろうとの予測の下に、株価が上昇することを前提とした買値の平均化のメリットに重点を置いた説明をしていたことが窺われるのであって、日商岩井株の実勢価格が右ワラントの権利行使価格を下回っており、株価もワラントの権利行使価格も下落を続けている状況にあること及びそのような状況下でのワラント取引には前記のようなリスクが伴うことについて、原告が的確に理解するに足りる説明をしたと認めることはできない。

(四) トステムワラント取引の勧誘について

前記認定事実によれば、Bは、日商岩井ワラント①、②の売却及びトステムワラントの購入を勧める段階では、原告に対し、ワラントには権利行使期間の制限があり、その期間が残り少なくなると価格が大幅に下落して売却が困難となる傾向があり、価格が上昇せずに権利行使も売却もできないまま権利行使期間が経過すると投資金額の全額を失うことになることにつき十分に説明し、原告もBの説明によりこれを理解するに至ったと認められる。

しかし、Bが原告に対してトステムワラントの購入を勧めた当時、右ワラントの価格及び実勢株価はほぼ一貫して下落を続けている状況にあり、しかもトステムワラントは権利行使価格が実勢株価を大きく上回っている状況にあったのであるから、Bは、右ワラントの購入を勧めるに当たっては、原告に対し、その時点での右ワラントの権利行使価格と実勢株価との対比並びにそれまでの右ワラントの価格及び株価の動向を具体的に説明した上で、右ワラントの購入後に株価が相当上昇しない限り、新株引受権の行使により利益を得ることはできないし、権利行使期間が残り少なくなっても右ワラントの価格が上昇に転じない場合には、右ワラント自体を売却することも困難になる可能性が高く、右ワラントの取引で利益を得るには、相場が大幅な上昇に転じることが不可欠の条件であり、この条件が整わないときには、右ワラント購入価格相当の損失が新たに生じるというリスクがあることについても十分に注意喚起して、原告が右の点につき的確に理解した上で、さらなる損失が生じるリスクの下に右ワラント取引を行うことを選択する意思を有するのかどうかを慎重に確認する義務があったというべきである。

ところが、前記認定事実及びBの供述によれば、Bは、それまで実勢株価が権利行使価格を下回った中でのワラント取引の経験に乏しく、それまで経験してきた相場と比べ著しく株価が下落していることから、いずれ株価が回復すると予測し、そのような楽観的予測の下に、日商岩井ワラント①、②の取引での損失を取り戻すにはトステムワラントの取引が最適であるとの印象を与える説明をして、原告に対し、右ワラントの購入を勧めたものと認められ、Bが原告に対し前記のような事項についての説明と確認を尽くしたものとは認められない。

(五) その他のワラント取引の勧誘について

Bが原告に対してその他のワラントの購入を勧誘する際に行った説明の内容の詳細は、証拠上つぶさに認定することはできないが、Bがこれらの取引の勧誘に当たり、前述の各取引におけるBの説明と原告の理解の不足を補うのに十分なほどに説明を尽くしたことを認めるに足りる証拠はない。

3  以上の事実によれば、Bの原告に対する一連のワラント取引勧誘行為は、証券外務員として求められる説明義務を尽くしたものとはいえず、その点においてBの原告に対するワラント取引勧誘行為には全体として違法性が認められ、Bの使用者である被告は、原告に対し、民法七一五条に基づき、原告が被告との間の一連のワラント取引により被った損害を賠償する責任を有するというべきである。

三  争点2(損害の額)について

前述のとおり、原告と被告との間の一連のワラント取引(利益の出たマツヤデンキワラントの取引を含む。)について、各ワラントの購入時に原告が支払った代金の合計額から、日商岩井ワラント①、②及びマツヤデンキワラントの売却時に原告が受領した代金の合計額を差し引くと二八六七万九七一五円となり、原告は、被告の前記不法行為により右同額の損害を被ったと認められる。

四  争点3(過失相殺の当否)について

前記認定のとおり、原告は、日商岩井ワラント①を購入する段階では、ワラント取引の仕組みにつきよく理解できていないことを自覚しながら、Bからの熱心な勧誘に押されるような形で二〇〇〇万円を超える額の資金を投入してワラント取引を開始したものであるが、その少し後に取引説明書や預り証を受領しており、事後的にでも右の取引がどのようなものであるかを確認し、今後もこれを続けていくことでよいのか、それとも早期に打ち切るのかを検討する機会があったといえるのに、これらの資料の記載にほとんど注意を払っていなかったと認められる。また、原告は、日商岩井ワラント②を購入する段階では、既に日商岩井ワラント①が短期間に相当値を下げていることを認識し、その値動きの大きさを理解できたはずであるのに、Bの説明するような価格上昇時の利益の反面として、価格下落時にはどのようなリスクが生じるのかに十分な関心を向け、Bに対してさらに説明を求めるなどして、右取引による利益とリスクを的確に理解した上で取引を行うか否かを判断しようと努めたとは認められない。さらに、原告は、トステムワラントを購入する段階では、ワラントには権利行使期間の制限があり、その期間が残り少なくなると価格が大幅に下落して売却が困難となる傾向があり、価格が上昇せずに権利行使も売却もできないま権利行使期間が経過すると投資金額の全額を失うことになることを理解していたと認められるから、それまでのワラント取引で多額の損失が生じた後にさらに右取引を行うに当たっては、右取引によれば価格上昇時には損失の回復が可能となる反面、価格下落時にはさらなる損失が生じることになることは推察できたはずであり、Bに対してより詳細な情報提供を求めるなどして、右取引による利益とリスクを特に慎重に検討した上で右取引を行うか否かを判断すべきであったし、右ワラントの購入後には、その価格動向に十分な関心を払い、下落傾向が続くようであれば早期に売却して損失の拡大を食い止めることを検討すべきであったといえるが、原告がこのような努力をしたとは認められない。

右の事実によれば、原告にもワラント取引による損失を最小限に留める努力を怠った過失があるというべきであり、以上認定の諸事情を総合考慮すると、過失相殺として、被告が賠償すべき額を前記損害額から五割を控除した額とするのが相当である。

五  よって、原告の請求は、被告に対し損害賠償金一四三三万九八五七円及びこれに対する不法行為後である平成五年三月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある(仮執行免脱宣言については、相当でないのでこれを付さないこととする。)。

(裁判官 徳田園恵)

<以下省略>

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